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クリニックの人事労務

クリニック開業後、先生方からご相談頂くことのひとつが人事労務に関わるスタッフマネジメントです。

日々の人事労務管理に役立てて頂けるポイントをお伝えします。開業後の先生はもちろんのこと、開業を検討されている先生方もご覧頂けると、開業後の具体的なイメージが描けるかと思います。

リスク管理だけでなく、スタッフの方のモチベーションアップに関わるポイントもお伝えしてまいります。

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目次 ~メルマガで連載した一部を掲載しております~

2015/5/29
クリニックの残業対策 残業代の削減方法 ①2.みなし労働時間制度
2015/5/22
クリニックの残業対策 残業代の削減方法 ①1.定額残業代制度
2015/5/15
クリニックの残業対策 残業代の削減方法 ①
2015/5/1
労働基準法法改正の動向
2015/4/24
障害者雇用納付金制度
2015/4/17
「くるみん」制度

スタッフの残業対策 「② みなし労働時間制度」

こんにちは。 

前回に引き続き、クリニックの残業対策制度をご紹介します。

「クリニックの残業対策制度」

①定額残業代制度  (前回ご紹介) 
②みなし労働時間制度 
③変形労働時間制度 
④残業時間の自己申告制度

今回は②のみなし労働時間制度についてお伝えします。

みなし労働時間制度とは、在宅クリニックや学会、外部研修など院外で業務に従事し、労働時間の計算が困難な場合、一定労働時間勤務したものとみなして計算できる制度です。

所定労働時間が1日8時間の場合、実際に業務に従事したのが6時間であっても、10時間であっても8時間とみなして計算します。

・導入の要件
①クリニックの外で労働がなされること 
一部がクリニックの外で行われ、残りがクリニックの中で行われる場合クリニックの外での労働についてのみ適用される。

②労働時間が算定しがたいこと 
院長先生の具体的な指揮監督や時間管理が及ばないこと 
以下の場合は、労働時間が算定しがたいとは判定されません。 
ア.院長先生と同行する場合 
イ.携帯電話等で随時院長先生の指示を受ける場合 
ウ.訪問先や帰院時刻など具体的な指示を受ける場合

・導入のメリットとデメリット

導入のメリット 
①就業規則に定めれば導入できる。 
労使協定が導入要件ではない。

②クリニックの外で労働した時間の管理が容易である。 
所定労働時間を超える時間労働したとしても一定時間労働したものとみなすことができる。 
職員が直帰した場合も所定労働時間労働したものとみなすことができる。

導入のデメリット 
デメリットとしては、導入の要件が厳しいことにあります。 
導入の要件を前述しましたが、全てを満たしている必要があります。

・注意点 
みなし労働時間制度を導入していても、以下の点は適用されます。 
①休日出勤、深夜労働の場合は追加の割増が必要

②休憩時間は、院内同様適用

③1日8時間1週40時間を超えれば36協定が必要

④みなし労働時間を9時間とする場合は、1時間の割増賃金が必要

⑤客観的に通常の所定労働時間ではこなしきれない業務量のときは院外での労働時間と院内での労働時間を合算した時間が労働時間になる

みなし労働時間制というと、いくら残業しても所定労働時間の賃金しか支払わなくてもいいと考えがちですが、導入のメリット、デメリット、注意点に留意しながら導入する必要があります。

制度を誤解して労働紛争になった判例もありますので制度の趣旨を理解されたうえで運用を検討する必要があります。

次回は、変形労働時間制度についてご紹介したいと思います。 
変形労働時間制度については、内容が盛りだくさんになりますので何回かにわけてお届けしようと思います。

法改正だけでなく、最近注目の成果主義賃金制度ともかかわってくる内容となっています

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スタッフの残業対策 「① 定額残業代制度」

こんにちは。 

前回は、患者さんを相手にしていることから、定められた時間通りで運用することは難しいため、残業対策として下記の4つの制度のご紹介をしました。

①定額残業代制度 
②みなし労働時間制度 
③変形労働時間制度 
④残業時間の自己申告制度

そこで、今回から4週にわたり、それぞれの制度について詳しくご紹介していきます。

今回は、定額残業代制度について見ていきます。

定額残業代(定額残業代・みなし残業代)制度とは、給与や手当に含めるなどの方法で、あらかじめ一定時間分の時間外労働に対する割増賃金(残業代)分を支払っておくという賃金の支払い方法のことをいいます。

クリニックによっては、固定残業手当、定額残業手当、管理職手当、職務手当と手当名は多種多様ですが、残業時間を賃金に含めるという趣旨で設けられる場合、定額残業制度に該当します。

・導入のメリットとデメリット 
定額残業制度はクリニックにとって本当にメリットがあるんでしょうか。 
この制度を利用することで、残業代を手当として定額支給しているのでどれだけ残業しても、支払わなくていいと考えがちですが 
実際の残業時間が、定額残業代部分を超えれば、差額分は支払わなくてはなりません。

クリニックからすれば、毎月残業代を定額で支払うことで、残業代が少ない月は、働いていない時間も余計に払い定額部分を超えたら、差額を支払うことになります。

結論から言えば、クリニックにとって残業代圧縮をねらいとするのであれば、この制度の導入のメリットはあまりないといえます。

・導入例 
クリニックでは、事務長や師長等管理職に該当する職員を対象にしていることに特徴があります。 
また、残業が多く発生する場合、事務手当、職務手当、又は調整手当として残業代を手当として定額支給している例が多いです。

・注意点 
定額残業制度の導入自体は違法ではありませんが、導入には注意点があり、運用を誤るとせっかくの制度が活かされず、逆に多くの残業手当を支払わなければならなくなります。

定額残業制度が合法と認められるには以下の要件を満たしている必要があります。

①残業代に相当する部分が、それ以外の賃金と明確に区分されていること 
②何時間分の残業代に相当するのか定められていること 
③実際の残業時間で計算された残業代が定額残業代を超える場合は差額部分を支給すること 
④定額残業代以外の所定内給与が最低賃金を下回らないこと 
⑤新規入職者に対しては、雇入通知書で定額残業代に相当する手当が時間外労働に対応することを明確にしておくが必要です。 
⑥在籍者に対しては、これまでの賃金を基本給と定額残業手当に分割する場合は不利益変更になりますので「労働条件変更通知書」等により個別の同意が必要なこと

つまり、割増賃金部分を雇入通知書や就業規則等で明記してしない場合は定額残業代と認められず、定額残業手当を設けていても別途、割増賃金が必要になるうえ、定額残業手当も割増賃金の計算の基礎に含めることになりますので、残業代が更に割高になりますから、注意が必要です。

・次回予告 
定額残業制度の運用方法はいかがだったでしょうか。 
次回は、みなし労働時間制度についてご紹介したいと思います。 

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残業代の削減方法①
こんにちは。
医療機関は、患者さんを相手にしていることもあり、 定められた時間通りで運用することは難しい場合もあります。 そこで、残業がどうしても多いクリニックでは、 残業対策を講じる必要があります。
一般的な残業対策としては、例えば、以下の方法が考えられます。 ①定額残業代制度
別名、「固定残業制度」といわれ、賃金を提示する際、月の残業時間を例えば30時間として設定し、30時間までの残業代を含める制度です。
②みなし労働時間制度
営業職(医療機関では在宅クリニック)によく適用される制度で、院外で業務に従事し、労働時間の計算が困難の場合、例えば、8時間働いたものとみなして労働時間を算定する制度です。
③変形労働時間制
労働基準法上の労働時間の規制を1週及び1日単位ではなく、週当たりの平均労働時間によって考える制度です。
例えば、繁忙期を1日10時間と設定した場合、通常であれば、8時間を超えた2時間分が残業となりますが、10時間を超えるまでは残業代が発生しません。
④残業時間の自己申告制
残業する必要がある場合に、残業申告書で残業時間を申請し、上長が残業を認めた場合に残業代が発生するという方法です。
それぞれの制度の運用のメリットについて列挙しましたが、各制度には、メリットだけでなくデメリットもあり、運用にはいくつかの注意点があります。
運用を誤り、労働紛争(例えばあっせん、労働審判、民事提訴)に発展した判例もいくつか存在しますので、次週よりそれぞれの運用の留意点と効果的な運用方法についてご紹介していきます。

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労働基準法法改正の動向
こんにちは。
来年春の施行にむけて労働基準法に大幅な法改正の動きが出ています。
その一つには有給休暇取得促進があります。
具体的に、新しい制度では有給休暇の付与日数が10日以上ある職員(一般職員だけでなく事務長、看護師長等の管理職も含む。)を対象に年5日についてはクリニック主導で消化させなければならなくなります。
この制度は、大病院だけでなく、中小クリニックや診療所も有給休暇の取得義務化の対象となる方向で検討が進んでいます。
ただし、職員が有給休暇の時季を指定した場合やクリニックが有給休暇の計画的付与(※)をした場合は、それらの日数の合計を年5日から差し引いた日数について義務付けられ、有給休暇の消化日数が5日以上に達したときにクリニックは、職員に有給休暇を取得させる義務から解放され、5日を超える日数については従来通り職員からの申請による取得でよくなります。
具体的には、クリニックから職員に対し有給休暇日を指定するにあたって以下の3点が検討されています。
1.有給休暇を有する職員に対し、時季に関する職員の意思を尊重
2.職員の有給休暇取得状況を把握
3.有給休暇の管理簿を3年間保管の義務付け
厚生労働省の調査では、日本の有給休暇の取得率は47%にとどまり、 正社員の16%は有給休暇を1日も消化していません。
有給休暇は、職員の心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障し、労働生産性を高めるねらいもあります。
今の制度では、職員に申請書等の届出を提出させて、事業所がそれを承認または許可したときにはじめて有給休暇を取得できる制度となっている場合が多いのが実情です。
そこで、厚生労働省は、職員の有給休暇を義務付ける方針へ検討に入り、職員の希望を踏まえた上で、年5日以上の有給休暇の取得が確実に進むような仕組みの導入が適当としました。
未消化の職員が多いクリニックには罰則規定も設けられる予定で来年春施行を目指す方向で進んでいるので、今後の動向に注意が必要です。
※計画的付与について 有給休暇の付与日数のうち、5日を除いた残りの日数について、クリニックが計画的に有給休暇を取得させる制度

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障害者雇用納付金制度
こんにちは。
今月から障害者の雇用を促進する法律が改正されます。
今回の改正により障害者雇用納付金制度の対象範囲が拡大されました。
「障害者雇用納付金制度」とは、国が常時雇用している職員の人数規模により2%以上の障害者の雇用を義務付け、 2%に満たない病院(医療法人、クリニックを問わず)からは納付金を徴収し2%以上の病院には調整金や助成金、報奨金を支給する制度です。
これまでは、納付金徴収の対象が常時雇用している職員数201人以上の病院でしたが、4月より101人以上になりました。
例えば、職員数150人の病院を例に挙げてみましょう。3月までは、障害者雇用納付金制度の対象外でした。
4月からは、150人の2%である3人以上の障害者を雇用する必要があります。
仮に平成27年度末時点で1人も障害者を雇用していないと1人あたり4万円の納付金の支払いが必要となります。
年間では、以下の計算となります。 150人×2%×12か月×4万円=144万円
また、障害者雇用促進法は、2%以上障害者を雇用しなければ、単に納付金を支払うというだけでなく、著しく雇用率を下回っている場合、厚生労働省から勧告を受けることになります。
勧告を受けたにもかかわらず、是正しない場合、病院名が公表されることになりますので注意が必要です。
実際に3/31には2か所の病院に勧告があり、8社の企業名が公表されました。
今月から計画的に採用すれば、今からでも十分対応は可能ですから101人以上の病院の場合は、比較的採用しやすい身体障害者の採用から始められてはいかがでしょうか。

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「くるみん」制度
こんにちは。
育児支援に積極的に取り組んでいる一定の基準を満たしたクリニックに対し、「くるみん」制度の認定制度があります。
「くるみん」とは子育て支援をしていることを国から認定を受けられる制度です。
くるみんの認定を受けると、以下のメリットがあります。
1.名刺や貴院のホームページにアピールできる
2.クリニック求人広告やハローワークの求人票に記載することで優秀な人材の確保が期待できる 3.職員の定着、モチベーションやクリニックへの帰属意識の向上それに伴う生産性の向上が期待できる
4.建物などの割増償却をすることができる税制優遇措置が受けられる
今月から法改正により、これまでに「くるみん」の認定を受けている場合、一定の基準を満たすと、新たな認定制度として「プラチナくるみん」が新設されました。
「プラチナくるみん」の認定が受けられると建物等の割増償却制度について3年間適用期限を延長することができるようになります。
これに合わせて、「くるみん」の認定制度を受けるための行動計画策定指針も以下のように改定されました。
1.取り組みの対象に非正規労働者が含まれていることを認識のうえ、取り組みを進めていくことが重要であること
2.男性の子育てに関する制度の利用促進に係る取り組みや働き方・休み方の見直しに資する取り組みを進めることが重要であること
3.計画の実施状況の点検に当たりPDCAサイクルを確立することが重要であること
4.育児休業に関する規定を整備し、労働者の休業中の待遇や休業後の労働条件について労働者に周知すること
行動計画の策定・届け出については、育児関連の助成金を受けるためにも必要となります。
他院との差別化として取り組まれてはいかがでしょうか。
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